アスベスト被害について

アスベスト(Asbestos)は石綿(イシワタまたはセキメン)とも呼ばれています。天然にできた繊維状の鉱物で、軟らかく、耐熱・対磨耗性にすぐれ、かつ安価であったためため、建材製品(耐火壁・天井・軒天・間仕切壁・外壁など)、ボイラー暖房パイプの被覆、電気製品、自動車部品などに広く利用されてきました。特に、昭和40年代の高度成長期には、鉄骨造建築物などの軽量耐火被覆材として多く使用されてきました。

健康被害

アスベストは、目に見えないくらい細い繊維であるため、気づかないうちに吸い込んでしまい、肺の中に入ると組織に刺さります。そして、15~40年もの潜伏期間を経て、肺がんや悪性中皮腫(悪性の腫瘍)などの原因となるということがわかってきました。日常生活を営む上では、アスベストを吸収することはありませんが、高濃度に飛び散ること、長期にわたって大量に吸い込むことが大きく影響します。

飛散を防止するために

吹きつけアスベスト等が使用されている建築物を、解体・改造または補修する場合、定められた措置を施さずに解体等を行うと、アスベストが飛散する恐れがあります。

そのため、建物解体時に周辺へのアスベスト飛散防止を図るため、「大気汚染防止法」、「労働安全衛生法」、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」などで予防や飛散防止等が図られています。大気汚染防止法では、事業者は作業の場所・時間・方法などを都道府県知事へ届け出ることが定められており、解体等作業にあたっては、アスベスト除去する場所を隔離したり、集塵・排気装置を設置するなど、作業基準を遵守することが求められ、違反した場合には、処罰の対象となります。廃棄物処理法では、アスベストを一般の産業廃棄物よりも厳重な管理が必要となる特別管理産業廃棄物に指定しています。

アスベスト使用の確認方法

アスベスト使用の有無は、事前調査にて行う「設計図書による調査」、「現場目視による調査」、「分析調査による判定」などから確認することができます。設計図書による調査では、建物の竣工年、建物に使用されている建材の商品名などからアスベストの有無を判断することができます。

事前調査の詳しい内容につきましては、お気軽にエヌエステックへお問い合わせください。

アスベスト除去作業

アスベスト除去作業は、アスベストを飛散させないために、定められた工法に基づいて慎重に行う必要があります。

エヌエステックでは、アスベスト処理作業時の確実性・安全性だけでなく、作業効率を高めた粉じん飛散防止処理に努めています。詳しくは、有害物質処理事業をご覧ください。

石綿関係法規の変遷

年号法規、通達名法規・通達の概要
昭和 35(1960)年「じん肺法」制定じん肺健診についての規定(石綿も対象)
昭和 46(1971)年「労働基準法特定化学物質等障害予防規則」
(特化則)制定
製造工場が対象、局所排気装置の設置、作業環境測定の義務付け
(測定方法の規定なし)
昭和 47(1972)年「労働安全衛生法(安衛法)」制定、
「特化則」再制定
安衛法が新たに制定され、特化則は同法に基づく規定に
昭和 50(1975)年 「労働安全衛生法施行令」
(安衛法施行令)の改正
名称等表示(石綿5%超対象)
「特化則」の大改正
(昭和45年 ILO職業がん条約批推のため)
石綿5%超対象、取扱い作業も対象、石綿等の吹付け作業の原則禁止、
特定化学物質等作業主任者の選任、作業の記録、特殊健診の実施、掲示等
昭和 63(1988)年「作業環境評価基準」
(厚生労働省告示)制定
法規に規定されている各種物質の管理濃度を規定(石綿も対象:2f/cm3)
平成 元(1989)年「大気汚染防止法(大防法)・同施行令・
同施行規則」の改正
石綿を特定粉じんとし、特定粉じん発生施設の届出、
石綿製品製造/加工工場の敷地境界基準を10f/Lと規定 
平成 3(1991)年「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」
(廃棄物処理法)の改正
特別管理産業廃棄物として「廃石綿等」を新たに制定。
吹付け石綿、石綿含有保温材等の石綿を含有する廃棄物が該当
平成 7(1995)年「安衛法施行令」の改正アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)の製造等禁止
「労働安全衛生規則」(安衛則)の改正吹付け石綿除去作業の事前届出
「特化則」の改正石綿1%超まで対象が拡大、吹付け石綿除去場所の隔離、呼吸用保護具及び保護衣の使用、
解体工事における石綿使用状況の事前調査結果の記録
平成 8(1996)年「大防法」の改正特定建築材料(吹付け石綿)を使用する一定要件をみたす建築物の解体・改造・補修する
作業が「特定粉じん排出等作業」となり、事前届出、作業基準の遵守義務を規定
平成 9(1997)年「大防法施行令・同施行規則」の改正 〃
平成 11(1999)年「特定化学物質の環境への排出量把握等及び
管理の改善の促進に関する法律」制定
特定第一種指定化学物質として石綿が規定され、年間500kg以上使用する場合に、
環境への移動・排出量を国への報告義務付け
平成 16(2004)年「安衛法施行令」の改正石綿含有建材、摩擦材、接着剤等10品目が製造等禁止
「作業環境評価基準」
(厚生労働省告示)の改正
石綿の管理濃度を改正(施行期日2005.4.1)
平成 17(2005)年「石綿障害予防規則」(石綿則)の制定
(施行期日:2005.7.1)
特定化学物質等障害予防規則から、石綿関連を分離し、単独の規則である石綿障害予防規則を制定。
解体・改修での規制(届出、特別教育、石綿作業主任者等)を追加
「大防法施行令・同施行規則」の改正
(施行期日:2006.3.1)
吹付け石綿の規模要件等の撤廃と特定建築材料に石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材が追加。
掻き落し、破砕等を行わない場合の作業基準を規定
平成 18(2006)年「大防法」の改正
(施行期日:2006.10.1)
法対象の建築物に加え工作物も規制対象となる
「安衛法施行令」の改正
(施行期日:2006.9.1)
石綿0.1重量%超の製品の全面禁止(一部猶予措置あり)
「石綿則」の改正
(施行期日:2006.9.1)
規制対象を石綿0.1重量%超に拡大一定条件下での封じ込め、
囲い込み作業に対する規制の強化等
「廃棄物処理法」の改正
(施行期日:2006.10.1)
石綿0.1重量%超を含有する廃棄物(廃石綿等を除く)を石綿含有廃棄物と定義、
無害化処理認定制度が発足(施行期日2006.8.9)
平成 20(2008)年「石綿則」等の一部を改正する省令等
(施行期日:2009.4.1)
・事前調査の結果の掲示
・隔離の措置を講ずべき作業範囲の拡大、隔離の措置等
・吹付け石綿除去作業について電動ファン付き呼吸用保護具着用を義務づけ
・船舶の解体等の作業に係る措置(施行期日2009.7.1)
平成 23(2011)年「石綿則」の一部を改正する省令
(施行期日: 2011.8.1)
船舶の解体等について、建築物解体等と同等の措置を義務付け
平成 24(2012)年「安衛法施行令等」の一部を改正する政令
(施行期日:2012.3.1)
石綿0.1重量%超の製品の製造等禁止の猶予措置を撤廃
平成 25(2013)年「大防法」の改正(施行期日:2014.6.1)届出義務者を発注者に変更、解体等工事の事前調査及び説明の義務化、作業基準の改正
「建築物石綿含有建材調査者講習登録規定」
(国土交通省告示)
建築物の通常使用における石綿含有建材の使用実態の把握推進のため、同規定を創設
平成 26(2014)年「石綿則」の一部を改正する省令
(施行期日:2014.6.1)
集じん・排気装置の排気口からの石綿漏えいの有無の点検、作業場前室の負圧状態の確認、
損傷・劣化等石綿粉じん発散のおそれがある保温材等の除去等の対応の追加
平成 29(2017)年「石綿含有仕上塗材の除去等作業における
飛散防止対策について通知」(環境省)
石綿含有仕上塗材の除去作業における飛散防止対策について、
吹付け工法で施工されたものについては吹付け石綿として扱うこととした
平成 30(2018)年「安衛法施行令」、「安衛則」の改正
(施行期日:2018.6.1)
分析、教育用の石綿の製造・輸入・使用等を可能とした
「石綿則」の一部を改正する省令
(施行期日:2018.6.1)
石綿分析用試料等の定義、製造に係る措置、製造許可、届出等を規定
「建築物石綿含有建材調査者講習登録規定」
(厚労省・国交省・環境省告示)
3省連携により、国交省の旧規定の内容に解体時の事前調査に必要な知識を追加
令和 2(2020)年「大防法」の改正
(施行期日:一部除き2021.4.1)
すべての建材への規制拡大及び作業基準の適用、
事前調査方法の法定化・資格者による事前調査の実施、
事前調査結果の記録の保存及び都道府県への報告の義務付け、
取り残し等の確認及び記録の保存の義務化、
直接罰の創設等
「石綿則」の一部を改正する省令
(施行期日:一部除き2021.4.1)
事前調査及び分析調査を行う者の要件の新設、計画届の対象拡大、
事前調査結果の届出制度の新設、隔離(負圧不要)を要する作業に係る措置の新設、
その他作業に係る措置の強化、作業計画に基づく記録・保存の義務化、
石綿の有無が不明な建材に対して石綿が使用されているものとみなして
工事を行うことにより分析調査を不要とする規定を吹付け材にも適用 等
「建築物石綿含有建材調査者講習登録規定」の
一部改正(厚労省・国交省・環境省告示)
一戸建て等石綿含有建材調査者の講習規程を新設

注 1)建築基準法:一定規模以上の増改築において、吹付け石綿、石綿含有吹付けロックウールが施工されている部分は除去することが、また一定規模※未満の増改築、大規模な模様替え、大規模な修繕の場合は、除去又は封じ込め、囲い込みを行うことが義務付けられた。(施行期日 2006.10.1)
※一定規模:増改築部分の床面積が増改築前の床面積の 1/2

注 2)宅地建物取引法:建物の売買等の取引に際して、石綿が使用されているか調査した経緯があればその結果を建物の持ち主又は宅地建物取引業者は、買主等に対して、石綿の使用を重要事項として通知することが義務付けられた。

アスベストのレベル別危険度

レベル1レベル2レベル3
建材の種類石綿含有吹き抜け材石綿含有保温材
石綿含有耐火被覆材
石綿含有断熱材
石綿含有形成板等
(レベル1,2以外の石綿含有建材)
発じん性著しく高い高い比較的低い
必要な対策著しく発じん量が多い作業で、作業場所の隔離や高濃度の紛じん量に対応した防じんマスク、保護衣を適切に使用するなど、厳重なばく露防止対策が必要なレベル比重が小さく、発じんしやすい製品の除去作業であり、レベル1に準じて高いばく露防止対策が必要なレベル発じん性が比較的低い作業で、破砕、切断等の作業においては発じんを伴うため、湿式作業を原則とし、発じんレベルに応じた防じんマスクを必要とするレベル